GMW-B5000、通称フルメタルORIGINは、カシオが近年推し進めているCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインのプラットフォーム的なポジションにあることを強く感じさせるシリーズだ。今回加わったGMW-B5000TVBは、そのフルメタルのキャンバスに90年代のジャパニーズSFカルチャーを描いた。デジタルウォッチながら、ハイスペックな外装を装備するという時計としての特殊性を、SFの世界観とリンクさせている。

ステンレススティール製モデルからスタートしたGMW-B5000は、外装素材にチタンを追加するのみならず、カラーIPやレーザー加工を駆使し、誕生から4年のあいだに多彩な表情のモデルを展開してきた。なかでも、外装全体にグリッド・トンネルのパターンを施したGMW-B5000CSや、ドットを組み合わせてカモフラージュ柄を描いたGMW-B5000TCFといったモデルは、フルメタルORIGINのデザインに新鮮味を与えたばかりか、メタル製G-SHOCKのデザイン表現を広げることにもつなげたと言えるだろう。

GMW-B5000TVBもまた、新たなCMFデザインを取り入れてエッジィなルックスに仕立て上げた。まるで、1980年代から90年代のSF映画に登場する近未来的な建造物やビークルを想起させるデザインだが、それもそのはず、このモデルがインスピレーションソースにしているのは「 バーチャルワールド」だ。
このモデルを企画したそもそものきっかけは、デジタルウォッチにクオリティの高いメタル外装を組み合わせるというGMW-B5000シリーズのクリエイションと、近未来世界を描いたゲームやアニメなどのサブカルチャー作品に、共通する魅力を感じ取ったことであるという。もっとも、このコンセプト自体は、2021年10月にリリースされたGMW-B5000TVAで採用されており、新モデルはその後継機に当たる。しかしながら完成したデザインは実に斬新で、前作を大幅に昇華させた仕上がりになっている。

フルブラックの外装を取り入れた前作から一転、GMW-B5000TVBはブラウン、シルバー、ブラックという3色の切り替えパターンが目を惹く。このデザインを具現するべく駆使したのが多色のIP加工だ。ベースとなるチタンケースにTIC(チタンカーバイド)処理を施して耐傷性を確保したうえで、まずはケース中央にシルバーゾーンを作るためにマスキング。この状態で全体にブラウンIPをかけたら、ブラウンIPを残すためにケース左下をマスクし、その後、全体にブラックIPを施す。最終的にケース中央と左下のマスクを剥がすと、見事に色分けされたパターンが表出するというわけだ。
シンプルな工程のように捉えられてしまいそうだが、実のところ、このマスク処理は非常に特殊だ。というのも、普通にマスキングしただけでは色の境界が縒れたり欠けたりしてしまうため、そうした不具合が出ないよう、これまでは色の境界部分が時計の凹部に重なるような配置にしていたのだという。しかしながら新しい製造方法ではその必要がなく、フラットな面にもしっかりと境界を表現できるようになった。

そればかりか、トップベゼルの9時位置に施されたコーションマークを模したグラフィックはレーザーによってベースのシルバー色を浮かび上がらせ、一方で3時側は凹面にして塗料を施している。また、12時側と6時側のラグ部分やバンドに設けられたディンプルは肉抜きされているが、これらの穴の内側にも表面と同色のIPをかけるべく、丁寧なマスク処理が施されたという。
こうした手間のかかる製造工程を取り入れているにも関わらず、外装素材には純チタンを採用。ステンレススティールのほうが複雑な加工や仕上げを行いやすいはずだが、コンセプトであるバーチャルワールドの世界観をよりクオリティ高く表現するためにあえてこの素材が選ばれ、それは軽快な装着感をもたらすことにもつながった。

新しい技術を取り入れながらユニークな表情を次々と展開するフルメタルORIGINは、まさにCMFデザインのプラットフォームと呼ぶに相応しい。そして尽きることのないCMFデザインは、G-SHOCKフリークのみならず、世界中の人々にこの先もサプライズを与え続けていくのだろう。