1984年に誕生したDW-5000Cのオクタゴンデザインを継承しつつ、先進の機能を搭載した、ファーストモデルの直系シリーズORIGIN。このORIGINを“極める”というコンセプトを掲げ、2022年に発表されたのがMRG-B5000。ステンレススティールやチタンなどの素材を用いたフルメタルORIGINをさらに進化させ、G-SHOCKの最高峰であるMR-Gにふさわしい強靭なボディとエレガントな外観を両立させたモデルだ。

発売直後から注目を集めたMRG-B5000は、その人気が冷めやらぬなか、早くも新たなバリエーションをラインナップに加えた。それがMRG-B5000BA。基本設計は従来モデルと同じながら、文字板に蒸着処理、ケース四隅のパーツやビスにIP処理でブルーのアクセントカラーを取り入れ、第1弾のMRG-B5000Bとは見た目の印象を異にしている。デザインテーマは「青墨」。書道などで使われる青い顔料を固めた墨のことだが、これをモチーフとした背景には、MRG-B5000に適した色とは何かを改めて考えた経緯があるという。
ファーストモデルのデザインを踏襲したORIGINは、アナログ表示のMR-Gと比較するとごくシンプル。つまり、同じ“強さ”を特徴とするG-SHOCKでありながら、MR-Gが持つ猛々しさとは強さの方向性が異なると考え、辿り着いたのが「禅」のイメージだ。余計なものを削ぎ落とし、耐衝撃性能の本質を極めたORIGINのシンプルなデザインから想起させるのは「静かなる強さ」。その静謐なイメージを具現化するべく取り入れたのが、心を癒す効果があるとも言われる「青墨(あおずみ)」のカラーであり、武具甲冑をモチーフとしたMR-Gのように、時計にストーリー性をも与えられたというわけだ。

もっとも、このようなアクセントカラーを加えられたのは、MRG-B5000が素材と構造をフルメタルORIGINから大幅に進化させているからに他ならない。ケースに64チタン合金、ベゼルトップにコバリオン、バンドのコマにDAT55Gという先進素材を採用して耐傷性を高めたMRG-B5000は、これらの高硬度素材にも徹底した研磨を施すべく、ベゼルを25個のパーツに分解し、そのうえで耐衝撃性能も確保するマルチガードストラクチャーを新たに採用。こうしたパーツの細分化は、アクセントカラーを取り入れたMRG-B5000BAのようなバリエーション展開をも可能にしたのだ。

この、タフさと加飾性を両立させるうえで役割を果たした素材のひとつがDAT55G。愛知に拠点を置く特殊鋼メーカー、大同特殊鋼が生み出したチタン合金である。もともとこの素材は、ゴルフクラブのヘッドに使うことを目的として開発されたもの。より遠くへ、より真っ直ぐにボールを飛ばしたいというニーズに応えて1990年代後半に開発をスタートし、2001年に初めてゴルフクラブに採用された。しかし、跳びを謳う高反発クラブに反発力の規制がかかり、2008年頃よりDAT55Gの需要はトーンダウンしてしまう。これを機に大同特殊鋼は素材特性を改めて分析。その結果、DAT55Gの持つ高強度、高靭性という特性が腕時計に向いているのではないかと考えてカシオに提案したところ、採用に至ったという。

それまで時計に使われていた純チタンと比べて硬質で傷がつきにくいのはもちろんのこと、カシオがさらに着目したのはその加工性。もともとの素材は比較的軟らかいため複雑な形状への加工も容易だが、加工後に熱処理を行うことによって、完成形では純チタンの約3倍もの硬さになる。この特性を生かしてMRG-B5000ではバンドのコマにDAT55Gを採用。64チタン合金では空けられなかったバンド側面の微細なピン穴がDAT55Gでは容易に加工できるようになった。さらにはバンド表面に艶やかな表情を纏わせ、ピンにアクセントカラーを施すことも可能になったのだから、DAT55Gはまさに、ORIGINを極めるMRG-B5000に最適な素材だったと言えるだろう。

いずれの素材が欠けても完成し得なかったMRG-B5000の強靭さと美感。これを実現させるまでのチャレンジングな姿勢とクリエイティビティは、今作でのカラー展開のみならず、MRG-B5000のさらなる進化をも楽しみにさせてくれる。