2022年5月にリリースされたMTG-B3000。この時計はメタルと樹脂との組み合わせによって生まれる、MT-Gの力強く特徴的なルックスはそのままに、ケース厚をかつてのMTG-B1000よりも2mm以上もスリム化。軽快な装着感に加え、ジャケットの袖口にも収まりやすいスマートなプロポーションを実現した、MT-Gの新基軸だ。

その第1弾として発表されたのは、ブラックベースに、レッドまたはグリーンのIPでアクセントカラーを添えたモデルや、グレー×ブラックのダークトーンでまとめた全3モデル。いずれもMT-Gらしい精悍な表情を見せつつ、ワンプッシュでバンド交換ができる利便性を備え、リリース直後から好評を得ているが、このシリーズに早くも第2弾が登場する。

最新作のMTG-B3000Dは「光と影」をコンセプトに、シルバー×ブラックのクールな表情にまとめ上げたモデル。腕時計としてはベーシックなカラーリングではあるが、第1弾が挿し色を用いたインパクトのあるルックスであったことを踏まえ、MTG-B3000Dでは一転してスタンダードなカラーが採用されている。薄くてジャケットスタイルでも使いやすいG-SHOCKと言えど、第1弾のブレスレットタイプの2モデルは特徴的なカラーリングだっただけに、つける人を選ぶモデルであることも事実だろう。急激にライフスタイルが変わったこの時代、真に万人に向けられたMT-GはこのMTG-B3000Dだと思う。

もっとも、カラーリングこそベーシックではあるものの、そのクリエイションは実に手が込んでいる。MT-Gの特徴である、パーツ同士が織り成す構成感を際立たせ、よりインダストリアルな雰囲気のあるルックスを具現するべく、MTG-B3000Dではシルバー×ブラックの表現に注力し、質感を高めている。

要となるトップベゼルは、ステンレススティール製のパーツ全体にブラックIPを施し、その後、天面のみを研磨する手法を採用。これにより、天面はヘアラインが入ったステンレススティールが表出するが、G-SHOCKロゴをはじめとする文字やベゼルの斜面にはブラックIPが残り、シルバー色とのコントラストが際立つデザインになっている。この手法はデザインのアクセントにもなっている4本のビスにも用いられ、複数の爪が伸びた独創的な形状のケースバックと組み合わさることで、まさに立体的かつインダストリアルな佇まいを実現させている。これは、GMW-B5000MBで開発された加工技術が早くも応用された例である。

もちろん、コントラストを強調するクリエイションは、外装のみならずダイヤルを構成するパーツにも取り入れられている。そのひとつが時分針だ。針の形状やアルミの素材は第1弾モデルと同様だが、MTG-B3000Dでは両サイドがシルバー、センターがブラックのツートーンに変更。針はシルバー色のアルマイト加工を施したあとに、センターラインをレーザーで剥がすとともに凹状に切削し、溝部分にブラックのアルマイト加工を施すという凝りようだ。もうひとつは10時位置のインダイヤルで、ベースとなるのはシルバーの蒸着メッキを施した黒い樹脂製のパーツ。これをレーザーで剥離させることで、曜日やインジケーターの模様、リングの外周のシルバーがミラーのように輝いて見えるのも、アクセントとして効いている。

MTG-B3000Dは、全体をベーシックなシルバー×ブラックで統一させているが、パーツごとの素材や形状に適した加工を用いて時計の魅力を高めた、カシオの技術力が実感できるモデルだと言える。耐衝撃を司るカーボンコアガード構造や、モバイルリンクに代表される各種機能は第1弾モデルと同様だが、MT-G特有の構成感を一層強調するために、特別な加工プロセスがふんだんに用いられているのだ。

フルメタルORIGINが登場した2018年以降、カシオは独自のCMF（カラー・マテリアル・フィニッシュ）デザインを駆使しながら、GMWやMR-Gシリーズのメタル製モデルを拡充させてきた。その一方で、MT-Gはメタルと最先端の樹脂を組み合わせた異素材の融合を追求。外装においては時計の構造を可視化させるデザインを取り入れ、MT-Gならではの独創性と先進性をアピールし続けている。もちろん、耐衝撃構造を設計していく際には見せ方も並行して考える必要があるため、年々、企画や設計のハードルは高くなっているのは明らかだが、こうした「見せる構造」にチャレンジし続けることもまた、MT-Gの本質となっているように見える。MTG-B3000Dはこのチャレンジを乗り越えて完成した、現時点で最もエッジィなG-SHOCKである。