シリーズ初のフルアナログ。
それは、誰もが待ち望んだ進化か。
誰もの想像を超える革新か。
過酷な環境下で活動するプロフェッショナルのためのタフネスウオッチとして、耐衝撃構造×特化機能を備えたMASTER OF Gシリーズ。FROGMANは、その先駆けとして1993年に初号機が誕生。以来、名実ともにG-SHOCKを代表するモデルとして、様々な進化を繰り返してきました。そんななか登場したのがGWF-A1000。シリーズで初めて、フルアナログという新たな領域に挑んだ意欲作について、商品企画の目線からその開発秘話に迫ります。

商品企画担当 チーフ・エンジニア 牛山和人
開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部

ダイバーズウオッチ開発のため、自ら潜水士資格を取得した経験を持つ牛山氏。
─ いよいよ発売のFROGMAN最新モデル、GWF-A1000の誕生経緯について教えてください。
牛山:現在、G-SHOCKにはMASTER OF Gというシリーズがあり、陸海空の3カテゴリーを展開しています。なかでも、〈海〉モデルの筆頭であるFROGMANは、初代DW-6300が1993年に登場し、今なお進化を続ける人気モデル。G-SHOCKの立ち上げが1983年なので、スタートから約10年で早くもその地位を不動のものにしたといえます。MASTER OF Gの中核でありながら、G-SHOCKの代表格でもあるという位置づけですね。
そんなFROGMANの最大の特長は、潜水時計であること。本格的なダイビング用途に対応するため、国際機関が定める防水性、視認性、水中操作性など、多くの基準をクリアしています。そこが、同じ〈海〉モデルであるGULFMASTERとの違いでもあり、FROGMANがG-SHOCK唯一のダイバーズウオッチであるとされる所以です。
歴史も長く、1993年、初代DW-6300でスクリューバックメタルケースの採用で、ISO規格200m潜水用防水を実現して以降、1995年にチタンケース化(DW-8200)、1999年に小型化(DW-9900)、2001年にソーラー化(GW-200)、2009年に電波ソーラー化(GWF-1000)を実現しました。
さらに、2016年にはセンサー化を実現したGWF-D1000を発売。水深計測・方位計測対応のトリプルセンサーを搭載したこのモデルでは、企画の初期段階から海難救助のエキスパートの声を製品開発に多く取り入れました。完成したモデルは、後に潜水ミッションの最前線で使用される装備品として正式採用されるなど、名実ともにFROGMANのトップモデルになりました。
そして2020年、新たに誕生したのがGWF-A1000です。前作から約4年、プロ仕様のダイバーズウオッチとして完成度を極めたGWF-D1000の後ということもあり、次世代機の開発には大きなパラダイムシフトが必要でした。そこで、FROGMANの新しい歴史をゼロからスタートするという気持ちで企画に臨み、出した答えが「アナログFROGMAN」。デジタルのD1000に対し、アナログのA1000。FROGMANで初めてアナログという新機軸を打ち出した意欲作です。
歴代FROGMAN

1993
DW-6300

1995
DW-8200

1999
DW-9900

2001
GW-200

2009
GWF-1000

2016
GWF-D1000

2020
GWF-A1000
─ 今までのデジタル路線から一転。突然のアナログ化にはどのような理由がありますか。
牛山:アナログモデルの要望は以前からあり、常にアナログ化の機会をうかがっていました。フルモデルチェンジのタイミングについては、テクノロジーの進化で機が熟し、満を持して開発に着手したというイメージです。そのために研究開発を続けてきた成果が、今回のGWF-A1000に結びつきました。
とくに、アナログモデルでダイバーズウオッチに求められる要件をクリアするための技術革新が進んだということが大きいですね。
たとえば、潜水時計の規格のひとつにタイムプリセレクティング装置というものがあります。これは、潜水時間を測定する機能のことで、一般的なアナログダイバーズウオッチは、これに対応するために逆回転防止構造のついた回転ベゼルを備えています。しかし、回転ベゼルは衝撃に弱いため、これをFROGMANで採用すると、G-SHOCKが定める耐衝撃基準を満たすことが難しくなります。
そこで、GWF-A1000では、モジュールに針を独立駆動させるデュアルコイルモーターを3個搭載。特殊な運針制御で、潜水時間を表示することで、回転ベゼルなしでの計測を可能にしました。
メタルケースやスクリューバックに変わる構造・素材などの技術資産も、アナログモデルの開発を後押ししました。それが、2019年に実用化したカーボンコアガード構造のひとつで、GRAVITYMASTERに採用したカーボンモノコックケースです。これにより、モジュールを守る強度・気密を保ちながら、メタルの弱点ともいえる軽量化が可能となり、アナログモデル実現への道が広がったと思います。
また、Bluetooth®のテクノロジーも進化しています。2019年に大幅な小型化を実現した後、2020年にはさらなる省電力化に成功。その結果、GWF-A1000ではスマートフォンとの常時接続が可能となり、時刻修正や時計設定などの使い勝手が向上。さらに、専用アプリとの連携で、手軽にダイビングログが管理できるなど、時計単体では難しい新たな活用スタイルの提案も可能になりました。

アナログムーブメントやカーボンモノコックケース採用の外装デザインまで、すべてが新規設計。

G-SHOCKで初めてデュアルコイルモーターを3個搭載。全5モーターのフルアナログダイアル。

裏蓋と一体化したカーボンモノコックケース。高強度・低吸水性・軽量のカーボン素材を練り込んだ樹脂で成形。

スマートフォン連携で利便性を向上。専用アプリで、新たなダイビングライフの楽しみ方を提案。
新しい要素が詰まったGWF-A1000。FROGMANの系譜のなかで、どのような位置づけとなるのでしょうか。
牛山:GWF-D1000の後継ではなく、FROGMANにとって新しいマイルストーンになるモデルだと考えています。デジタルの系譜を超越したモデルなので、第7世代でもあり新世代でもあるという感覚ですね。
初のアナログという意味では、ネーミングも部内で検討しました。本来であれば、デジタルモデルに「MAN」、アナログモデルに「MASTER」をつけるMASTER OF Gシリーズのルールに従い「FROGMASTER」とするところですが、もともとFROGMANという単語に潜水作業員という意味があることから「FROGMAN」のままとしました。伝統のあるブランドを育てていこうという気持ちも込められています。
今後は、デジタルとアナログのツートップで展開していくことになると思います。そもそも、時計には大きくデジタルモデルとアナログモデルがあり、それぞれの良さがあります。GWF-D1000のようなデジタルモデルは、数値をより詳細に、多項目を一括して見られるという特長があります。
一方、GWF-A1000のようなアナログモデルは、経過時間や残り時間を針の角度で感覚的に把握でき、デジタルのように暗算がいらない。つまり、余計なことを考えなくていい。潜水時に頭を使うと脳の酸素消費量が増え、1本のボンベで活動できる時間が短くなってしまいます。極限状態で活動するエキスパートたちにとって、それは死活問題。直感的に時間がわかるということは、安全にミッションを遂行することにもつながるのです。
メタルケースやスクリューバックに変わる構造・素材などの技術資産も、アナログモデルの開発を後押ししました。それが、2019年に実用化したカーボンコアガード構造のひとつで、GRAVITYMASTERに採用したカーボンモノコックケースです。これにより、モジュールを守る強度・気密を保ちながら、メタルの弱点ともいえる軽量化が可能となり、アナログモデル実現への道が広がったと思います。
もちろん、見た目の違いも大きいですね。ギアやツールらしい外観のデジタルに対し、より時計らしい表情のアナログは、ダイビングユース以外にも、マリンレジャーや普段使いとの相性もいい。とくに今回のGWF-A1000は、FROGMANらしさを受け継ぎながら、細部まで新たなデザインにチャレンジしました。G-SHOCKやFROGMANのコアなファン、さらにはダイバーズウオッチファンにも受け入れてもらえる仕上がりになっていると思います。

普段使いにも映えるタフでスポーティなアナログスタイル。