Creator Interview
フリン・マクギャリー
-Chef-
一皿の上に芸術を表現する
料理界の若き革命児
食材にイマジネーションを膨らませ、新たな姿として一枚のお皿の上に表現される料理というクリエイション。
フリン・マクギャリーは10歳の頃から料理に没頭し、
わずか19歳でニューヨークにレストランをオープンさせた。
28歳となった現在は多くのシェフを率い、お客さんの心とお腹を日々満たしている。
料理は「毎日の芸術の実践」と彼は語った。
AM9:00。ニューヨーカーたちが仕事を始める時間。フリンとCoveのシェフたちは、PM5:00のオープンに向けて仕込みを始める。マーケットで旬の食材を目利きして買い集め、どう調理するかにアイディアを膨らませる。包丁さばきに迷いはなく、料理の完成に向けたクリエイションが動き出す。
Interview
料理は「毎日の芸術の実践」
世界トップクラスのクリエイターが鎬を削るニューヨーク。私たちのお腹を満たし、心を満たしてくれる料理を生み出すシェフも偉大なクリエイターであり、ニューヨークで特に脚光を浴びる一人がフリン・マクギャリーだ。わずか12歳の頃からレストランで働き始め、自宅では両親の友人たちを招いてコース料理を振る舞っていた。その後も名だたるレストランで修業を積み、19歳でニューヨークに自身のレストランをオープンした。瞬く間に話題が話題を呼び、規模を拡大した新店舗“Cove”が2025年末にオープン。生まれ育った西海岸のモダニズムをテーマにした内装やオリジナル家具、そして器の数々。店に入るとまずはその内観に視覚的に満たされ、料理への期待感は高まるばかり。オフィスへ出社するニューヨークのビジネスパーソンを窓越しに眺めながら、朝の仕込み作業でスタッフたちに指示を出すフリンに、料理に見出すクリエイティビティを聞いた。
―― ご自身の料理スタイルをどのように定義しますか?
私のスタイルは「自然に根ざしたもの」と言えるでしょう。食材の美しさを、最もシンプルな形で表現しようとしています。出身地であるカリフォルニアや、長く働いたスカンジナビア(北欧)の影響を受けています。何を皿に乗せ、何を削ぎ落とすかといったスタイルにおいてです。しかし、料理のインスピレーションはあらゆるところから来ています。日本の料理の影響も多分にあります。それは、素晴らしい日本料理店が身近にあるカリフォルニアで育ったからでもあります。
目指すのは、素材が持つ自然な美しさを増幅させることです。その方法は無数にあり、一つに絞り込むのは難しいですね。
―― ご自身のレストラン「Cove」のコンセプトを教えてください。
Coveは、ニューヨークという場所、そして東海岸の食材にフォーカスしたレストランです。そこに、私のルーツであるカリフォルニアとスカンジナビアのインスピレーションを織り交ぜています。ニューヨークの喧騒やストレスの中で、ダイニング体験を通して軽やかさや落ち着きをもたらしたいんです。現代的なファインダイニング(高級レストラン)の新しいあり方を形にして提案しています。
私たちは非常に若いチームでありながら、求めるダイニングはハイレベルだと思っています。テイスティングメニューを提供するための部屋もあれば、アラカルトを楽しめるスペースもあります。お客さんが店にいる間も、店を出た後もリラックスしてほしいんです。レストランに行くことの素晴らしさは、その瞬間に「没頭できる」ことにあると思います。そのための空間を作ることがCoveのテーマです。
―― ニューヨークという街でシェフとして挑戦し続けるタフさを教えてください。
ニューヨークは何をするにもハードな街です。多くの課題がありますが、同時に独自の視点も与えてくれる環境です。どんなレストランでも通用する街ではありません。この街の力学を見極め、それを自分の活動の一部にする必要があるのです。だから、「ニューヨークを受け入れるか、去るか」のどちらかしかありません。私はニューヨークに移住して10年経ちますが、この街のために妥協する点と、うまく折り合いをつける方法を見つけてきたと振り返って思います。
―― 料理の楽しさに目覚めた瞬間のことを教えていただけますか?
料理を始めたのは10歳の時でした。最初は単に「かっこいいな」と思ったからです。その気持ちが情熱へと変わるまでには少し時間がかかりましたが、ハイレベルなファインダイニングの世界について学び始めてから、真剣に取り組むようになりました。食を通じて非常にクリエイティブになれるということに気づいた時、心に火がついたんです。
―― あなたが12歳の頃、自宅に人を招いて食事会をしていましたよね。今ではニューヨークの中心地に店を構えていますが、今に至るまでを教えてください。
12歳の時、とにかく「作り続けたい」と強く思っていました。料理の素晴らしい点であり、少し制限にも感じる点は、「食べてくれる人」が必要だということです。そこで、両親に友人たちを呼んでもらい、大勢の人のために料理ができるようにする方法を思いつきました。料理の魅力は、ゲストや食べに来てくれる人と深く関われることにあります。それをより大きなグループに対して行いたいと思うようになり、ポップアップ・レストランを始めたり、自分の店を持つという目標に繋がりました。自宅でのポップアップは1年ほど続け、その後は様々なレストランで修業し、ニューヨークという街に辿り着きました。
料理人の武器である包丁。フリンが使っているその一本には、「鋳物師屋」の文字が。日本のものづくりがここニューヨークでも信頼され使われていた。
料理人の武器である包丁。フリンが使っているその一本には、「鋳物師屋」の文字が。日本のものづくりがここニューヨークでも信頼され使われていた。
お店に入った瞬間、目の前には広大なキッチンスペースが広がり、料理の香りと料理に没頭するシェフの熱気が伝わってくる。全員フリンと同世代の若いチームでありながら、手際よくそれぞれが調理を進めている。
―― 料理の何があなたをそこまで夢中にさせているのでしょうか?
料理は「毎日の芸術の実践」であるということだと思います。毎日少しずつ違い、新しい発見があり、食材も状況も変わります。そして、決して「完成した」と感じることがない。それは時に困難でもありますが、毎朝キッチンに立ち、前日よりも良いものを作ろうとする理由にもなります。毎日自分の技術を磨き続け、高め続ける余地があるのです。
―― 好きなことに没頭して時間を忘れてしまうような、その充実感について教えていただけますか?
料理というのは毎日すべてを一から始めなければならない仕事です。料理を始めて17年になりますが、今でも一日13~14時間は働いています。情熱を持つということは、すべてを注ぎ込むことだと思います。朝にファーマーズマーケットへ食材を見に行き、届いた魚を確認し、最後の一皿が出るのを見届けるまで、やるべきことは山ほどあります。毎日夕方5時までにすべてを準備するという目標があるおかげで、一日はあっという間に過ぎます。一日の中に「2つの日」があるような感覚です。日中は準備に追われ、夕方の5時から11時までは営業時間です。それはまるでアスリートのように試合をしている感覚です。プレッシャーは高いですが、一種のフロー状態に入ります。それが、一日の長さを忘れさせてくれます。
―― 日々どのようにインスピレーションを得ていますか。
「微調整」の繰り返しです。毎日すべての料理を試食し、一皿一皿を確認します。どう洗練させるか、どうすれば少しでも良くなるか。農家や漁師の方々と密に連携し、最高品質の食材が入るようにしています。毎日、何をするかは自分で選べます。完全にクリエイティブな日もあれば、キッチンの組織化に費やす日もあります。常に解決すべき課題があり、毎日が全く異なるところが私が料理を愛する理由の一つです。
―― 新しい料理が思い浮かぶ瞬間について教えてください。
料理を作ることは、「問題を解決すること」だと思っています。「さて、この食材をどうしようか? 焼くか、蒸すか、煮込むか? 何と合わせるか?」と考えます。市場や街を歩いている時に、そんなことが頭の中で巡っています。そしてキッチンに入ると形になり始めます。酸味を足すか、塩を足すか、火入れを少し変えるか。そうした調整を経て料理が完成します。
―― G-SHOCK GA-110をテーマに作ってくださった2つの料理のコンセプトを教えてください。
G-SHOCKから得たインスピレーションを2つの異なる角度から表現しました。一皿目はGA-110の「スチームパンク」のような、少しダークで重厚なイメージです。ワシントンの漁師から届いた素晴らしい銀だらを蒸して、全体に黒ごまのペーストを塗って仕上げました。さつまいもやネギも盛り合わせ、白地の皿の上でグレーと黒のグラデーションが重なり、建築的な形状と呼応し合うような一皿になりました。二皿目はフランスのデザート「ミルフィーユ」をアレンジしたものです。通常はサクサクのパイ生地を重ねますが、私たちは「湯葉」を揚げてクリスピーに仕上げたものを使いました。それにリンゴと黒豆のクリームを重ねました。GA-110のデザインにある多層構造を表現しつつ、G-SHOCKの持つ強さに私が大切にしている「軽やかさ」を見出そうとしました。
―― あなたにとって「タフであること」とはどういう意味だと思いますか?
何があっても臨機応変に、打たれ強く対処できることだと思います。困難なことやストレス、強いプレッシャーに直面しても、逃げないこと。そのためには謙虚さや自己探求が必要です。壊れない自分を手に入れるには、自分自身と向き合い、内省し、ポジティブであり続ける時間を積み重ねる必要があると思います。タフで壊れない心を持つことは、この世界で、特にニューヨークで生きていく上では必要なことなんです。
GA-110の開発イメージにある「スチームパンク」や構造、カラーリングをテーマにフリンが生み出した魚料理。蒸した銀だらに黒ごまのペーストを塗り、さつまいもやネギ、ラディッシュを添え、構築的な一皿に仕上がっている。
GA-110の多層的な構造をテーマにしたミルフィーユ。パイ生地の代わりに揚げた湯葉をベースにし、りんごと黒豆のクリームをレイヤーしている。G-SHOCKのタフさと、フリンが大切にしている「軽やかさ」の融合を狙った一皿でもある。
GA-110の開発イメージにある「スチームパンク」や構造、カラーリングをテーマにフリンが生み出した魚料理。蒸した銀だらに黒ごまのペーストを塗り、さつまいもやネギ、ラディッシュを添え、構築的な一皿に仕上がっている。
GA-110の多層的な構造をテーマにしたミルフィーユ。パイ生地の代わりに揚げた湯葉をベースにし、りんごと黒豆のクリームをレイヤーしている。G-SHOCKのタフさと、フリンが大切にしている「軽やかさ」の融合を狙った一皿でもある。
Profile.
フリン・マクギャリー
1998年生まれ。10歳で料理を始め、12歳より『エウレカ』と名付けたコース料理を振る舞うイベントを自宅で開催していた。19歳のときには自身初のレストラン「Gem」をオープンさせ、規模を拡大させた新店舗「Cove」を2025年末にオープン。自身のルーツである西海岸と、現在の拠点である東海岸をミックスした料理を作り、お店は連日予約困難なほどの人気店となっている。
Instagram. @diningwithflynn @cove.ny
Photography. Raphaël Gaultier
Interview. Shimpei Nakagawa
Edit & Text. Yutaro Okamoto_THOUSAND
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Creator Interview