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Julian Klincewicz | Los Angeles Creator’s Creative Scene | THISTIME magazine | G-SHOCK 腕時計

Creator Interview

Julian Klincewicz

ジュリアン・クリンスウィックス

-Artist-

映像・写真・絵画・スケート
多様な表現を魅せるアーティスト

写真、映像、音楽、絵画、文章、スケートボード。
ジュリアン・クリンスウィックスが用いる表現手段は幅広く、
どれをとっても“ジュリアンらしさ”が溢れているのだから不思議だ。
DW-6900をテーマにしたアートワークの話とともに、
尽きることのないそのクリエイティビティの源泉を辿った。

Interview

世界を少しでも多く経験したい

ジュリアンのアトリエは、ロサンゼルスにあるさまざまなクリエイターがアトリエを構える集合スタジオの一室にある。壁面と天井に設けられた大きな磨りガラスの窓からは柔らかな光が降り注ぎ、白を基調としたクリーンな空間に暖かな空気が流れている。ジュリアンはこの空間でタイプライターを叩き、ギターを弾き、絵を描き、写真を撮り、そしてスケートをする。壁には日に日に増える膨大なアイディアメモが貼り付けられ、まるでジュリアンの頭の中にいるかのようだ。彼のクリエイティブなアイディアはどのように生まれているのだろうか。

―― 常に新しい表現方法に挑戦し続けていますが、モチベーションはどういうところからきていますか?

パンクの女王であり詩人のパティ・スミスがとあるインタビューで口にしていた「突破するんだ。何度も何度も突破しなければいけないんだ」という言葉がずっと心に残っています。僕にとって同じことを二度繰り返すのはおもしろくなくて、一見同じことをしているように見えたとしても、少なくとも2%は新しい要素を加えるようにしています。それが人生の刺激になり、新しい発見につながるのです。アートとは「どれだけ自分をさらけ出せるか」ということだと思います。自分の世界を何かの形で表現し、それを見た人がその人自身のことを投影する。それが成立していればアートだと思います。つまり「誰かに理解されたい」、「自分の存在を認められたい」という気持ちがアートの原動力ではないでしょうか。僕にとってアートや表現とは、人生をより深く体験するための探究活動なのです。だから常に新しいことに挑戦していたいですし、何かの経験を得ることができればそれだけで十分価値があると思います。

―― 写真や映像、絵画、音楽、文章などさまざまな表現をされていますが、共通するテーマがあれば教えてください。

時とともにテーマは変化してきましたが、今は「色」がすべての作品をつなぐ要素です。例えば音楽を作るときだと、メロディーやモチーフを考えると「これは青っぽいな」、「これはライラックの花の色みたいだな」と色のイメージが頭の中に浮かんできます。写真や映像で世界を切り撮るときも、やはり僕が見えている色を表現しています。最近は文章を書くことに熱中しているのですが、文章を書くときも「この文章は紫色っぽいな」、「これは緑や青のイメージだな」と意識しています。もちろん具体的に色に関連づけるわけではないのですが、頭の中ではいつも色をイメージしています。

ジュリアンがカメラを持ち、何かを撮影しようとしているシーン

―― なぜ色が重要な要素だと思いますか?

育った環境の影響が大きいですね。僕の幼少期の記憶は、シカゴやミシガン州などアメリカ中西部で過ごした時間が多くを占めています。それらの地域は自然の色がはっきりしているんです。雷雨になると紫の色が見えてきたり、灰色がかった黄色の砂があったり、生い茂る木々の緑や真っ青な湖があったりしました。その景色がカラーパレットとして僕の頭に記憶されています。今住んでいるカリフォルニアは光が特別な場所だとよく言われますが、確かにそう感じます。鮮やかさと独特の美しさの色がある街で、色がダイレクトに視界に飛び込んでくるような景色が広がっている。そんなカリフォルニアが持つコントラストの強い色味が、僕が作品で使う色の大胆さやコントラストにつながっていると思います。

―― DW-6900をテーマに作ったアートワークも、ジュリアンらしい色やノスタルジックさが印象的でした。

時間をどう表現するかを考えました。最初は1週間毎日G-SHOCKのポラロイド写真を撮りました。そうすることで時間の流れや変化を記録できるのではないかと思ったんです。ほかにもビデオ撮影をして、スーパースローで手の動きを捉えたりもしました。その一瞬の中に完璧なバランスの瞬間が生まれるのではないかと思ったんです。でもふとある瞬間に、部屋に置いてあったカラフルなロウソクの蝋が溶けて垂れる様子を撮影することで、時間の流れを表現できるのではないかと思いついたんです。そのアイディアはさらに形を変え、その様子を絵として描くことに辿り着きました。このようなアイディアの試行錯誤を日々繰り返しています。

―― 今回はビデオカメラで撮影した作品とドローイング作品の2点を作ってくれましたが、出来栄えはいかがですか。

「時間」というテーマで作品を作ることはすごく魅力的でした。今の時代、特に商業的な仕事では「より早く、効率的に」というプレッシャーがどんどん強くなっています。でも僕はその流れに逆らって、もっと時間をかけてアイディアを深めていくことの大切さを表現したかったんです。だから時間を表現するための方法を毎日いろいろ試しましたし、そのアイディアは時間とともに変化して、最終的に形になった今回の作品には満足しています。

―― ジュリアンにとって“タフ”とは何でしょうか?

僕にとっての本当のタフさとは、自分らしさを貫くことです。自分が何者なのかを理解して、正直でいること。そのことが原因で周囲と摩擦が生じたとしても、耐えられる強さを持つこと。自分の価値観や考え方が必ずしもすべての人に受け入れられるわけではありません。でも、「これが自分なんだ。受け入れてもらえなくても構わない」と信念を持って言えることはすごくタフだと思います。ただ頑固に押し通そうとするのではなく、スマートに、優雅にやることが大事なんです。人の意見に流されるのではなく、「これが自分のやることなのだ」と静かに、でも確信を持って言えること。それが僕にとってのタフさです。

スケートボードに乗るジュリアンの姿

スケートボードもジュリアンのクリエイティビティの源の一つ。10歳のころからスケートを始め、スケートビデオや雑誌、デッキのグラフィックデザインなどからインスピレーションを得ているという。「スケートボードは想像力と身体性のバランスがいいんです。目の前のスポットをどう攻略するかを考え、身体で実行する。その感覚は今の制作プロセスにもつながっています」。

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アトリエの壁に貼られていた、ジュリアンが日々意識している生き方の指南書となる言葉の数々。どれもジュリアンが独自に生み出した言葉で、「NEVER RUSH(急ぐな)」「TAKE TIME TO LOVE(愛することに時間を使う)」など、どのように時間を過ごすか、どのように生きるかを綴っている。

Photo02

DW-6900をテーマにしたドローイングとそのアイディアのきっかけとなったカラフルなロウソク。ジュリアンのアトリエにはメモや家具、日用品などカラフルなものが溢れている。

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最近熱中している創作活動はタイプライターで文章を書くこと。毎日のTo Doリストを打ち込んでファイリングすることも10年近く続けているという。「今の時代にタイプライターを使う人は少ないけど、パソコンよりも手書きに近い感覚で、より人間的な作業だと感じます。これまで熱中してきた写真や映像は現実の世界を切り撮る表現だけど、文章は想像力から生まれる表現であり、僕にとって新しい創作の出発点。とても新鮮な感覚です」。

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ミュージシャンとしてギターやピアノ、ボーカルなどさまざまな曲を発表しているジュリアン。取材中もふいにギターを手に取り、頭に浮かんできた言葉を即興で弾き語ってくれた。

ジュリアンがデスクに座っている

01.

ジュリアンがギターを持っている

02.

Photography. Yusei Kanda
Interview & Text. Yutaro Okamoto _THOUSAND

Profile.

ジュリアン・クリンスウィックス/Julian Klincewicz

1995年、カリフォルニア州生まれ。写真や映像、絵画、音楽、詩などさまざまな表現活動を行うアーティストとして活動。世界中のミュージシャンやファッションブランドなどからの支持もあつく、ビヨンセが監督を務めたドキュメンタリー映画『Homecoming』の編集を担当し、グラミー賞を受賞。

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