ステファン・アシュプールが語る
パリとエスプリの関係
On Paris And Esprit
Stéphane Ashpool
Founder Of PIGALLE
Interview
今のパリは本当に面白い
パリのファッションブランド、ピガール。その創設者でもありデザイナーを務めるステファン・アシュプール。彼のルーツであるバスケットボールとパリならではの洗練されたファッション感覚を融合させた独自のスタイル提案で唯一無二の存在感を放ち続けているデザイナーだ。その活動が高く評価され、2024年にパリで開催された国際的なスポーツ大会では、フランス代表の公式ウエアを手がけるアーティスティック・ディレクター兼シニアデザイナーに抜擢されるという快挙も成し遂げた。今回は、ファッションとスポーツを自由自在に行き来するステファンに、自身のクリエイション、そして“パリの精神”である“エスプリ”について語ってもらった。
ステファンが新たに6月にオープンしたショップ“スーヴェニア・ピガール”。ピガールに来た観光客が、パリのお土産として何か持ち帰れるようなコンセプトをもち、Tシャツやスウェットなどのアパレルからキーホルダーなどの小物まで大人も子どもも楽しめるような品揃えとなっている。
ステファンがピガールに
こだわり続ける理由
ステファンが掲げるブランド名“PIGALLE”は、彼の活動拠点であり、パリ北部に実在する地区の名前でもある。自身が育ったこの地を象徴する存在としてブランドを展開し、今ではカラフルなバスケットコート“ピガール バスケットボール コート”を設けるなど、地域との深い結びつきが感じられる。さらに、その向かいには今年6月、新たにスーヴェニアショップ“スーヴェニア・ピガール” をオープンした。なぜそこまでピガールという場所にこだわり続けるのかを尋ねると、彼はこう答えた。
「ここで生まれ育ったから、というのが一番の理由です。ピガールは、パリの中でも特にコミュニティの色が強く感じられる場所。住んでいる人が多く、レストランやバスケットコート、さまざまなお店が立ち並んでいて、独特な雰囲気がある。昔から変わらないところもあれば、進化している部分もある。常に人の往来があって活気に溢れているんです」。
こうした活気があるのは、ピガールだけではなく、パリ全体にも広がっているという。
「コロナの収束以降、街自体が再び盛り上がってきていて、ファッション、デザイン、写真、アート、料理など、あらゆる分野で爆発的にクリエイティブなエネルギーが高まっている。海外からも多くの人が集まってきていて、今のパリは本当に面白い時期を迎えています」。
常に自由であることが
自分にとってのエスプリ
話は次第に彼のクリエイションに移る。
「私がピガールを始めてから、もう20年近くになりますが、常に自然体でいることを心がけています。これまでを振り返ると、ある時期はファッションショーに力を入れたり、また別の時期はスポーツに多くの時間を費やしていたり。昔からパーティーも頻繁に開いていました。私にとって大切なのは、常に“自由”であること。それが自分にとってのエスプリなんです」。
その精神は彼の様々なプロジェクトに反映されている。
「バスケットコートのデザイン、G-SHOCKとのコラボ、昨年手がけた大会のユニフォーム……。どれも1つのジャンルに縛られない自由さが自分らしさだと思っています。特にユニフォームのデザインを通じて、自分の中に“誇り”が生まれました。ただ、私自身が大きく変わったとは感じていません。今も、ただ前へ進み続けていたいという気持ちです」。
彼が手がけたフランス代表の公式ウエアは、フランス国旗のグラデーションを取り入れたポップでモダンなデザイン。白を基調とした落ち着いたトーンが、フランスらしいエレガンスとクラシックを感じさせ、地元フランスの人々からも高い評価を受けたという。
フランス人と会話をすると、よく出てくる言葉、“エスプリ”。フランス語で“精神”や“気質”を意味するこの言葉について、ステファンに意識しているかを聞くと、彼は即答した。
「すごく大事にしています。私は『小さくて家庭的なパン屋さん』のようなブランドを目指しているんです。妻はショップで働いているし、友人も一緒に仕事をするのが好き。だからこそ、自分らしいエスプリについて常に考え続けています」。
ステファンが新たに6月にオープンしたショップ“スーヴェニア・ピガール”。ピガールに来た観光客が、パリのお土産として何か持ち帰れるようなコンセプトをもち、Tシャツやスウェットなどのアパレルからキーホルダーなどの小物まで大人も子どもも楽しめるような品揃えとなっている。
2017年に製作したPIGALLEとG-SHOCKのコラボレーションでは、バスケットボールをプレーする時でも身につけやすいコンパクトな“DW-5600”をベースにリデザイン。ピガールらしいスポーティー&シックな印象だ。
アーティスティックなデザインで、観光名所にもなっているピガール バスケットボール コート。ステファンも日常的にこのコートへと足を運び、友人たちとプレーするという。
人生においてすべてはタイミング次第
ピガールは2017年にG-SHOCKとコラボレーションを行ったが、その腕時計にも彼のエスプリとパリらしさがしっかりと表れていた。
「G-SHOCKといえば“頑丈さ”が象徴です。でもそこに、私はちょっとした上品さを加えたかったんです。オフホワイトやローズピンクといった色を使ってね。そして、時計の裏には、“It’s all about the right timing. (すべてはタイミング次第)”という言葉も刻みました。人生において、タイミングというものは本当に重要です。どれだけ才能があっても、タイミング次第で物事は大きく変わる。だからこそ、時間を意識するということが本当に大切だと思っています」。
夏のパリ。いつまでも日が暮れない夕暮れ時、ピガールのバスケットコートとスーヴェニア・ピガールに挟まれた路上で、ステファンは取材に応じながら、集まってきた友人たちと談笑し、バスケットを楽しむ少年のような一面を見せ、さらに1歳の我が子と触れ合う父親の顔ものぞかせていた。その姿はまさに“自然体”という言葉がぴったりで、パリジャンらしい自由なスタイルを体現していた。ステファンは言う。「予定に縛られず、自分でスケジュールを変えられる自由。それこそが私にとって一番のラグジュアリーなんです」。
Photography. Asuka Ito
Interview. Ko Ueoka
Edit & Text. Takayasu Yamada_THOUSAND
THISTIME MAGAZINE
G-SHOCK Meets Paris Chic