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スチャダラパーBoseと巡る、 “G-SHOCKと渋谷” の “90年代と今”

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日本でまだそれほどHIPHOPが根付いていなかった90年代初頭から、独自のラップで注目を集め始めていたスチャダラパーのBose氏は、当時と現在のG-SHOCKをどう見ているのか。高木完氏から受け取ったG-SHOCKのバトンはY2Kにハマる娘にパスされる?!

▼Boseとは?
90年に音楽レーベルのMAJOR FORCEから高木完プロデュースによりデビューしたヒップホップグループ、スチャダラパーのMC。大ヒットした小沢健二との『今夜はブギー・バック』やストリート世代にとってのエバーグリーンな夏歌とも言える『サマージャム'95』など、数々のクラシックを生み出し続けている。G-SHOCKが渋谷で爆発的なヒットとなった年とされる97年には、TV番組ポンキッキーズで使用された『大人になっても』をリリースした。

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10代の頃に渋谷で見つけた初めての1本

ーー今回は日本語ラップが興隆した90年代からラッパーとして活動されているスチャダラパーのBoseさんにお話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。

Bose:よろしくお願いします!

ーースチャダラパーさんがHIPHOPを始めたのはデ・ラ・ソウルなどのラッパーに影響されたのは有名な話ですが、ファッションもそういった方達から影響を受けていたんですか?

Bose:東京の先輩や友達のスタイルや、海外のレコードジャケットを隈なく眺めて向こうのラッパーの情報を得ていましたね。

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ーー専門学生として渋谷で過ごされていた時代はどこで洋服を買われてましたか?

Bose:渋谷のショップを回って探すんですけど、アメリカのラッパーが着ているような服がなかなか見つからなくて。だから一番それっぽい服を古着屋で買って着てました。

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ーーHIPHOPの本場アメリカにはこの当時すでに行かれてましたか?

Bose:90年代初頭に初めてNYに遊びに行って、現地のスポーツショップでパタゴニアのジャケットやチャンピオンのスウェットを見つけて“そうそう、これこれ!”とやっと本物を見つけることができました。

ーースチャダラパーとしてデビューした後は、A BATHING APE®の服を着て様々なメディアに登場されていた印象が強いです。

Bose:NIGO®のBAPEやタキシン(滝沢伸介)のNeighborhoodとか友達の作る服をよく着ていましたね。

ーー今回はBoseさんがコレクションされているG-SHOCKの一部をお持ちいただきましたが、その中にもBAPEとのコラボモデルがありますね。

Bose:これはブランドの設立25周を記念したモデルで、いかにもBAPEらしいブリンブリンさが気に入っています(笑)。箱もゴールドですごい!

ーーまだ90年代の頃は、アメリカのHIPHOPと聞くと悪そうなギャングスターラッパーを連想してしまいがちでしたが、Boseさんたちスチャダラパーの3人は、原宿のストリート的な雰囲気を感じていました。やはりそういった交友関係が影響していたんですね。

Bose:それもありますが、僕達っぽさを求めた結果でもあります。というのも、NYに行って感じたのが、“本物は違う”ということ。偶然Qティップ(ラップグループ、ア・トライブ・コールド・クエスト)がレコードを漁ってるところを見かけたことがあって、カレッジロゴのスウェットやポロのスイングトップを着ていたんです。当時は雑誌やPV、アルバムジャケットなどから情報を集めて、そこに映るラッパーの姿がリアルだって思い込んでいたけど、あれは撮影の為に用意した服で実際は全然違うんだってことを知って。

ーーメディアを通して見ていたものと、突然眼前にあらわれたリアルなラッパーの姿に大きなギャップがあったと。それにしても、初めてのNYでQティップに会えるなんて羨ましいです。

Bose:当時ラップをやっている子がアメリカに行って帰ってくると、もう向こうのラッパーのジャケットイメージのまんまで帰ってくるんです(笑)。僕たちはもう少し普段着っぽい、見かけたQティップのあのリアルな感じを東京的に落とし込んだらこんな感じだろうってことを意識してましたね。

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ーーG-SHOCKはこの頃から愛用されていましたか?

Bose:一番最初がどのモデルだったかまでは思い出せないけど、90年代の初めの頃にはもう着けていた記憶があります。

ーー当時ファッション雑誌などで、BoseさんがよくDW-5900を着けられているのを見ていました。

Bose:他にも色々と着けていたけど、この3つ目のデザインが印象的だから一番記憶に残っていますね。

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ーー30年くらい前から現在もG-SHOCKを愛用していただいていますが、これほど長い間G-SHOCKを着けていただいているのには何か理由があると思います。どういったところが魅力なのでしょうか?

Bose:スウェットやTシャツ、短パン、スニーカーにバシッと合う時計がこのブランドしか思い浮かばなかったからかな。昔からず〜っとこの格好だから時計も変わらない感じ。あと、疲れて家に帰ってきた時にソファにポイっと投げても気にならない、そんなラフに使えるってところも好きです。

ーー落としても壊れないというコンセプトの時計ってありませんからね。高級時計が気になる時期はなかったですか?

Bose:僕って未だに子供っぽいところがあって、すごく高いものに対するアンチの気持ちを持っているんです。男たるもの時計だけは高いものを! って考え方があるけど、その良さが全くわからない。なんせ、バランスが変じゃないですか。腕元だけ1000万って絶対おかしいよ(笑)。それがサマになる人もいるんだろうけど、ウチらが時計をするならG-SHOCKがちょうどいい!

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ーー誰でも買える値段で肩肘はらない気軽さがG-SHOCKの魅力でもあります。

Bose:それにしても、どういった経緯でG-SHOCKを知って、いつから使い始めたのか全く思い出せない。もしかすると、シンちゃん(スケートシング)が家に遊びに来た時、ソファにポイっと置いていったものを使い始めたのが最初なのかも。

ーースケートシングさんがBoseさんの家に遊びに来るなんて豪華なシチュエーションですね。

Bose:いや、タイニー・パンクスの完ちゃん(高木完)とヒロシくん(藤原ヒロシ)の気がしてきたな。2人の話を真に受けて育った世代だから、まだ日本で誰もG-SHOCKを着けてないような頃に“今カシオのこの時計がいいんだよ!”って教えてもらって、当時はそんな感じで周りの友達から自然に色々と影響を受けることが多かったですね。

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時計はライブ中にチラチラ見るものじゃない!

ーースチャダラパーの皆さんは、日常だけでなくライブでもG-SHOCKを着けていただいていますよね。時計は機能とアクセサリーのどちらの役割もあると思いますが、ライブ中に時計があると便利ですか?

Bose:デザインや色の主張が強くて目立つから、着こなしのポイントとして着けてます。

ーーG-SHOCKは他の時計ブランドと違い、音楽やアート、スケートなどのカルチャーと深くリンクしてきました。長年、それらのシーンにいらっしゃるBoseさんだからこそ知る、とっておきのエピソードを教えていただけますか。

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Bose:特に記憶に残ってるのは、20周年記念の時に関係者に配るためのG-SHOCKを作らせてもらったこと。アイコニックなDW-5600に何か文字が入れられるということだったので、だったら文字より顔文字でしょ! と、そのモデルがこれです。

G-SHOCK スチャダラパーコラボモデル

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ーースケートシングさんによるパッケージのデザインもファンにはたまらない要素ですね。

Bose:この箱だけでも欲しい人いるよね! だけど、これは事務所で保管しているもので僕は持ってないんですよ。

ーーどうしてですか?

Bose:日頃の感謝の気持ちを込めて、お世話になってる関係者の方に配るため楽屋に置いていたんです。あまりにも人気ですぐになくなっちゃって、気がつくと僕の分がありませんでした。

ーーなるほど……。でも、それほど大盛況だったのは喜ばしいことです。

Bose:音楽繋がりでもうひとつエピソードがあります。ビースティ・ボーイズも出てた音楽イベントで彼らが僕たちのライブを袖からチェックしていた時、なぜかANIがず〜っと、G-SHOCKをチラチラ見てたんです。その姿を見たビースティ・ボーイズが“あいつ、なんでライブ中にずっと時計を見ているんだ?”って言ってたらしく。後でわざわざANIのところまで来て“時間を気にしてライブしてるやつ初めて見た”といって帰ったそうです(笑)。

ーーどうしてANIさんは時計をチラチラ見ていたんでしょうね?

Bose:よっぽど大切な予定でもあったのかな(笑)。まぁネタとしていい思い出です。

ーーそういったスチャダラパーさんたちが生み出す音楽の空間にG-SHOCKも寄り添えていることが素直に嬉しいです。

Bose:こうして振り返ってみると、音楽はもちろんですが、G-SHOCKは自分と関わりの深いアパレルブランドや、エリック・ヘイズさんにオバタタクくんといったアーティストの方など、色々と接点が多いですね。親和性が高いブランドが音楽イベントをサポートしてくれるってことはありがたいことです。

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ファン心をグッと掴むコラボモデル

ーー車好きとしても有名なBoseさんですが、特にコンパクトな欧州車に目がないとお聞きしました。欧州車とG-SHOCK、どちらもゴツゴツとしていて少し造形が似ている気がします。潜在的にこういったシルエットのプロダクトがお好きなのでしょうか。

Bose:きっとそう。僕の中でG-SHOCKは車のデザインと共通する部分があると思ってるんですよ。

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ーーと、いいますと?

Bose:企業魂みたいなものを持ったカシオの社員の方が、色々と考えて導き出して出来上がったデザイン。僕がこのブランドに惹かれる理由ってそういった部分も関係してそう。オシャレなデザイナーさんが手がけるシュッとしたデザインもいいけど、努力の賜物から生まれたプロダクトに惹かれてしまいます。

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ーー本日はBAPEとのコラボモデル以外にも、お気に入りのコレクションをお持ちいただきました。紹介していただけますか。

Bose:昔から仲良くしてもらっている糸井(重里)さんが手がけたゲーム『MOTHER』が30周年の時にリリースされたコラボモデルです。MOTHERが好きで昔からG-SHOCKを着けてる僕のためのものだよね! ってことでずっと大事に保管してます。

G-SHOCK MOTHER コラボ

ーー今でも熱狂的なファンを持つ名作ゲームですね。

Bose:文学的でゲームとして新しかったMOTHERは、ゲーム好きの間では未だに語り継がれる金字塔。G-SHOCKの面白いところは、“そうそう、こういうの待ってました”っていうファン心をグッと掴むコラボにもあると思う。

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ーースチャダラパーさんは、ゲームだったり、自分たちの趣味や好きなものをリリックに取り入れるイメージがあったので、ひょっとしたらG-SHOCKをテーマにした曲がありそうだなと、調べてみたら15年前に存在していました。

Bose:そう、あるんです! ブランドの設立25周年を記念して、完ちゃんがプロデュースした『T.I.M.E』に曲を入れました。ラッパーのバーバルやルーペ・フィアスコも客演として参加しています。

ーーHIPHOPを始めるきっかけだけでなく、初めてのG-SHOCKや、G-SHOCKとのリレーションを築くきっかけも完さんの存在が大きいようですね。

Bose:そうみたい(笑)。

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次世代にも通ずる昭和の可愛さ!?

ーー現在は生活の拠点を鎌倉に移して海の近くで生活されているそうですね。

Bose:子供が生まれたことがきっかけで、暮らしやすそうなこの土地に引っ越しました。海が近いし、都会のように人が多くて疲れることも少ないです。

ーー都心で生活をされていた方が鎌倉に移住して不便さを感じることはありませんか?

Bose:よく聞かれるし、移住するまでは僕もそう考えてました。でも、都心だと出掛けて駐車場ひとつ探すのにも一苦労だし、信号や渋滞が多いので、車好きとしては本当の意味で運転を楽しめていませんでしたが、今は車のポテンシャルを知ることができています。それに電車だと1時間で都内に行けるので暮らしやすくて便利です。

ーースローライフを堪能されているということは、以前より時間に縛られることが少なくなって、時計を着ける習慣も減りましたか?

Bose:環境の変化より、スマホがあるから時計がなくても別に困りはしませんよね。そもそもアクセサリーとしてちょうど良かったのが始まりだから、今でもこういった赤や白のG-SHOCKを気分で取り入れることが多いです。

ーー現在も毎日愛用されていますか?

Bose:その時々によります。時計ってクセになるものだから、着けてない時期が続けば無くても気にならないけど、何かのきっかけでまた着け始めると、腕元がギュッと締め付けられるあの感覚がないと落ち着かなくなります。

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ーー時計を着け忘れて外出した時、時間を確認するためわざわざポケットからスマホを出す作業が煩わしかったりします。そんな時、時計の便利さに気付かされることがあります。

Bose:それ、すごく分かるな。

ーー今日は最近リリースされたDW-5000R-1AJFをお持ちしました。1983年に誕生した初代G-SHOCKを忠実に再現したモデルです。長年のG-SHOCKフリークでもあるBoseさんから見て、こちらの新作はいかがでしょうか?

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Bose:当時のモデルを持っていた気がする。だからなのか、新しいのに懐かしさを感じますね。なんか他のモデルよりも少し重い、このずっしりとした感じが着けた時にしっくりときますね。

ーー赤、青、黄色をあしらったフェイスのデザインやベゼル、裏蓋など細部に至るまでオリジナルを忠実に再現するため、当時と同じG-SHOCKのマザーファクトリーである山形カシオの職人や技術者たちによって作られています。

Bose:今、世の中が昔のものを求めていると言うか、当時にしかなかった素材やシルエットで出来たものに再注目してる人が多いから、“あのモデルを当時と同じ工場で忠実に再現”なんて聞くとグッとくる人が多いはず。現に僕も昔のチャンピオンのスウェットが欲しくなって古着屋で3万も出して買いました。それと同じで、G-SHOCKユーザーの中にもこういったモデルを求めていたファンが多かったでしょうね。

ーー原産国にこだわる、ある種のスペック中毒みたいな部分って日本の裏原から海外に広まって、今では世界的にそういった価値観のムードが浸透しているそうですよ。

Bose:なるほど。今履いてるニューバランスの靴も、同世代の友達に合うと“それどこ製?”“やっぱりニューバランスはMADE IN ENGLANDだよね”とか盛り上がりますもんね。つまりこの現象って、全部NIGO®達のせいだ! 彼らがそういった価値観を広めてしまった(笑)。

ーーBoseさん世代の方たちが、そういったファッションの楽しみ方を発見して広めてくださったんだと思います。ところでBoseさんは、90年代からそれがリバイバルしてトレンドになっている現在まで、ずっと着こなしが変わらないですよね。10代で好きなものが定着して、そこから一切ブレていないところにかっこいい大人だと感じます。

Bose:同じようなものを着ているように見えて、実はちょっとずつ変化もしてるんですよ。今日のスウェットはテツ(西山徹)が手がけるDESCENDANT®のですが、彼らが作るものって、素材だったり加工の技術だったりが少しずつアップデートされてどんどんクオリティが良くなっている。周りの友達が作ってるものが優秀になるにつれて、それにあやかって僕のファッションも進化してます(笑)。

ーーG-SHOCKもアップデートを繰り返しながら継続して生産され続けています。このブランドのアイコニックなモデルのDW-6900RL-1JFやGA-2100RL-1AJFは、初代G-SHOCKカラーを採用した新作です。

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GA-2100RL-1A

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Bose:カラーリングがしっくりときていいですね。アナログのデザインはあんまりつけたことがないから新鮮でいいけど、慣れてないから時間を確認する時に一瞬戸惑ってしまう。だから僕はこっちのデジタル派かな。

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ーー少し話が変わりますが、最近お子さんもG-SHOCKを着け始めたとお聞きしました。

Bose:小学5年生なんですが、オシャレに興味を持ち始めて、今はY2Kに興味があるみたい。僕のスウェットをダボっと着てそこに細いパンツとポンプフューリーを合わせて、腕にカラフルなG-SHOCKを着けてファッションを楽しんでます。

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ーーそのファッションの組み合わせ、まさに2000年代の渋谷や原宿ですね!

Bose:“昭和はかわいい”なんて言いながら僕の服ばかり着てます。でもちょっとずれてるんですけどね。我々が生まれたのが昭和なだけで、ファッションは平成ですから。自分たちが大正っていいよね! って言ってるのが実は昭和だったのと同じかな(笑)。

ーー高木完さんから引き継いだG-SHOCKのバトンが次は娘さんに渡ったんですね。なんだか素敵なお話です。

Bose:僕の大事なG-SHOCKを大切に扱ってくれる姿を見ると嬉しくなります。

ーー私たちの世代は、小・中学生で親にG-SHOCKを買ってもらって大事にしている子は、本棚にコロコロコミックを並べたり、兄から借りたゲームのカセットを使い終わったらちゃんと返しに行く、そんな印象を勝手に持っていて、そういった子はみんなスチャダラパーが大好きなイメージがあります(笑)。

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Bose:それすっごくいい! 僕は今でもその気持ち大事にしてます。

◆Special thanks
撮影場所:Good Mellows(https://www.instagram.com/goodmellows/

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