B-Boy Shigekix|ブレイキンを極め続ける22歳の素顔

2024年パリ大会の新競技、ブレイキンでの活躍で話題を呼んだB-BOY Shigekix。彼の活躍で多くの日本人がブレイキンを知り、新たに興味を持った人も多いはず。トップでシーンを牽引する彼だが、実はまだ若干22歳。ダンスブームが盛り上がる今、日本を代表するB-BOYは何を考えているのか、話を聞いた。
▼B-BOY Shigekixとは?
7歳でBreakingを始める。11歳で海外の大会に挑戦を始め、2020年Red Bull BC One World Finalにて世界最年少で優勝。同年からJDSF全日本ブレイキン選手権を3連覇など、これまでに47回の国際大会での優勝を経験する、日本が世界に誇るB-BOY。2024年のパリ大会では3位決定戦で惜しくも敗れこそしたものの、圧巻のパフォーマンスで魅了し、興奮と感動を多くの国民に届けた。
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Contents
Topic 1
Shigekixのルーツをおさらい
ーーまずはおさらいという意味でShigekixさんのキャリアの始まりを教えてください。
Shigekix:一番最初は、まず自分の姉(AYANE)がブレイキンと出会って、先に始めていたんです。姉の練習について行くのが日常でした。
ーーそこが大阪のブレイキンの聖地ですよね。
Shigekix:難波駅の半地下の広場なんですけど、当時、大人に混じってブレイキンをやっている子どもなんてほぼ居なかったので、かっこいいお兄さんお姉さんたちに可愛がってもらって。気がついたら、自分もタオルを頭に巻いてストリートで三点倒立の練習をしていましたね。

ーー始めたのが7歳で、もう11歳からは世界大会に進出されていますよね。10代のハイライトをあげるとすればどのモーメントですか?
Shigekix:まずは11歳で世界選手権『Chelles Battle Pro』のU12部門で優勝した時ですね。世界的に注目を集めていたキッズB-BOYのLil’Demonと決勝で当たったんです。勝敗はその日の結果でしかないので、優勝よりも、自分がずっと映像で憧れていた彼と戦えた現実に感動しました。諦めないで挑戦する大切さを学んだ瞬間ですね。

ーー世界で結果を残す中で、Shigekixさんと言えば、広告などでもお馴染みの“フリーズ”が武器ですよね。やはり昔から磨いてきたムーブなのでしょうか?
Shigekix:もうブレイキンを始めた時から、僕はフリーズに病みつきなんです。ピタっと止まる瞬間がたまらなく好きで、ゲームするよりもフリーズしてる方が楽しいって子どもでした。ただ止まるだけじゃなくて、音楽と合わせる感覚も重要で。誰かがランダムに曲を流すストリートでの練習で、小さい頃から即興力が磨かれたんだと思います。

ーーそのままメキメキ成長し、世界最高峰の舞台、『Red Bull BC One world final』に15歳で最年少出場、18歳では歴代最年少優勝という快挙を果たします。
Shigekix:この大会は、審査員が勝ったと思う方の名前をボードで上げるシステムで、初出場の目標は、とにかく一票を上げてもらうことでした。トップの世界で最年少ながらも爪痕を残そうと、全力で挑んだら、準決勝まで進むことができて。それが大きな自信になって、優勝にも繋がりました。
ーー10代から謙虚で着実な目標設定にストイックさを感じます。プロとして、ブレイキンで生活していく、と決めたのはいつ頃からでしょうか?
Shigekix:中学三年生で初めてスポンサー契約を結んでTEAM G-SHOCKのメンバーになれた時ですね。プロの定義は様々ありますが、この時に大人として認めてもらえたと実感しました。
ーーどのインタビューでも、いつも堂々とした受け答えで、22歳とは思えない落ち着きを感じます。それは10代からプロアスリートとしての自覚が強くあったからなのでしょうか?
Shigekix:キッズの大会で優勝してマイクを渡された時も、「長丁場お疲れ様です」とか生意気に言ってましたね(笑)。昔から本心で喋るということは意識しています。小手先だけの言葉だと、相手に何も伝わらないんですよね。ブレイキンを代表して話す機会もいただくので、いつも魂を込めて話すことは意識しています。
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Topic 2
激動の2024年から得た学び
ーー2024年はShigekixさんにとってもブレイキンのシーンにとっても大きな意味を持った年となりましたね。
Shigekix:ブレイキンが2024パリの正式種目に採用された2020年の記者会見から、毎日カウントダウンしていました。大会当日から逆算して、今何をすべきかを常に考えていた期間で、自分にとっては、すごく長い一日を過ごしているような4年間でした。

ーー開会式では旗手も務め、事前の注目度も高い中、プレッシャーもかなり大きかったのではないでしょうか?
Shigekix:もちろんストレスがなかったと言えば嘘になりますが、そこも含めて必要な準備だったと思います。ネガティブな感情もしっかり乗り越えた上で、本番を迎えることができました。
ーー緊張してしまう場面で、私たちでも使えるような、“重圧を跳ね除けるコツ”が何かあれば教えていただけますか。
Shigekix:すごくシンプルなことですが、「何の為に頑張って来たのか、何の為に今からステージに立つのか」を、改めて自分の心に問いかけるんです。これは本当に大事なことだと思っています。

ーー初心に立ち返るんですね。
Shigekix:どれだけ経験値を積んだアスリートでも、不安から完全に解放されることってなくて。だから舞台袖で何度でも思い返すんです。ブレイキンへの愛情、ステージへの思い、その為に乗り越えて来たプロセス、これらを一瞬の心の迷いで台無しにしてしまうのは、負けるより悔しいこと。そうだよな、こんな時こそ楽しんでいこう。そういうメンタルに持っていくのが理想の状態ですね。

ーーパリでの姿は、すごく想いが伝わるパフォーマンスで多くの人々に感動を与えていたと思います。
Shigekix:勝ってる瞬間を取り上げてもらえることもありがたいのですが、これまで悔しい経験や苦しい負けがあったからこそ今の自分があると思うんです。

ーーブレイキンを極め続けるShigekixさんのタフネスマインドを感じました。
Shigekix:結果が全てではなくて、もっと大事なのは挑戦なんです。これからもチャレンジすることは素晴らしいということを、もっと成長した姿で見せていきたいですね。
ーーあの大舞台を経て、自分も頑張ろうと思った次世代のプレイヤーたちへ、どんなメッセージを伝えたいですか。
Shigekix:ワークショップで小学生にいつも伝えているのは、
①「自分の理想像を思い描く(3年、5年、10年後)」
②「逆算して計画を立てる」
③「周りに話す」
この3つのことを大事にして欲しいということです。
ーー①と②は想像できますが、やっぱり、周りに話すのも重要なんですか?
Shigekix:話すことで、周りが協力してくれるようになります。例えば遊びに誘われて、ただ謝って断るよりも「こういう目標があって、今頑張りたいから」って話せばきっと応援してくれるし、達成できた時に一緒に喜んでくれることもありますから。

ーーなるほど。そうやって環境が整っていくのは目標達成にも繋がりますね。
Shigekix:何より、言葉を伝える時っていうのは、目の前の相手よりも、自分自身がいちばん近くで聞いてるんですよ。だから言霊として唱えることで認識を高める意味もあります。是非この3つの工程は試してみて欲しいですね。
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Topic 3
G-SHOCKとのリレーション
ーーこれまで身に着けたG-SHOCKで思い出深いモデルはどれですか?

Shigekix:これは小学生の時にサンタさんからもらったモデルです。ブレイキンの大会に行くとG-SHOCKのバナーがあったり、憧れの人たちが広告で着けていたり、とにかくG-SHOCKを着けたらブレイキンが絶対上手くなるって思ってたんですよ。
ーーブレイキンとG-SHOCKの親和性を感じるエピソードです。
Shigekix:みんなが着けてる憧れのアイテムでしたね。遊びもゲームもしないでブレイキンばかりしていた当時の自分にとっては、仮面ライダーのベルトみたいなもので。これを巻くと強くなれるんだって思ってサンタさんにお願いしました(笑)。
ーー昔から成長を見守って来た相棒ですね。
Shigekix:それこそ、G-SHOCK主催の大会で優勝すると大会の日付が入った限定モデルがもらえることがあって、かなりモチベーションになってました。今でも家にトロフィーのように大事に飾ってます。それを見ると、手に入れた時の喜びや、勝てなかった時の悔しさがフラッシュバックしますね。
ーーちなみに、最近のお気に入りモデルはどれでしょう。

Shigekix:一番最初に憧れたG-SHOCKはDW-5000シリーズの形です。昔よく着けたまま踊っていた、まさに自分の原点なので、今でも「お気に入りは?」と聞かれるとまずこのシルエットのモデルを答えますね。
ーー今、Shigekixさんが着用されているモデルは、初代G-SHOCKのカラーを忠実に再現したモデルになります。

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Shigekix:この配色が「これぞG-SHOCK」といった感じで一番しっくりときますよね。ブレイキンをする時はこういったウレタンバンドの物が基本ですが、私服での普段使いはこっちのモデルを愛用することが多いです。G-SHOCKの象徴的なシルエットなのにメタル素材ってところに、心くすぐられます。

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ーー大人になったからこそ着けたいシーンも変わってきますよね。
Shigekix:まさにその通りで、こっちのアナログモデルは、スーツによく合わせます。最近、フォーマルな格好をする機会が増えたので重宝するんですよ。G-SHOCKの存在感が良いアクセントになりますね。ブルーのモデルを青のネクタイに合わせたり、色合わせも楽しんでいます。


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ーー今、新しく欲しいモデルなどはありますか?
Shigekix:いろいろなモデルを着けて来ましたが、いつか自分のシグネチャーを作れたら最高です。G-SHOCKは少年時代の憧れなので、あの頃の自分が喜ぶようなアイテムにしたい。それがキッズたちのモチベーションになったら嬉しいですし、その為にもブレイキンで活躍する姿を見せ続けたいです。
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Topic 4
世界を見据えた今後の指標とは!?
ーー昨今のアスリートはセルフプロモーション力も求められてきています。ShigekixさんはメディアやSNSの活用が上手だと思うのですが、私たちにも参考になるようなアドバイスをいただけますか?
Shigekix:結局はリアルを伝えることが大事だと思っています。キャラを作ったり、取り繕った方が、早く興味を引くことはできるかもしれません。ただ、その状態で自分自身やブレイキンの認知を広げても、嬉しくないし意味がないので。

ーー確かに、本当の自分を見せて好きになってもらえた方が嬉しいですもんね。
Shigekix:だからSNSではブレイキンだけじゃなくて、本当に好きなことを発信しています。僕が描いてるアートのことだったり、好きなファッションや、着けてる時計など。ブレイキンやってる人たちだけに向けるんじゃなくて、さらに広い範囲の人へ届けたいので。
ーーShigekixさんの活躍を通して新たにブレイキンの魅力を知った人も多いと思います。そんな人たちが注目すべき大会などを教えてください。
Shigekix:ちょうど2025年は日本開催の世界大会があるんですよ。世界最高峰の1on1ブレイキンバトルの『Red Bull BC One World Final Tokyo』。そして世界選手権の『WDSF World Breaking Championships』です。
ーー今年はブレイキンを見るには絶好のタイミングですね。
Shigekix:これだけ大きな大会を生で見られるチャンスはなかなかないと思いますよ。是非とも会場でトップレベルのバトルの熱気を感じて欲しいですし、メディアを通して少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
ーーますますブレイキンが盛り上がりそうです!これからのシーンに必要なことはどういったことでしょうか。
Shigekix:自分は次世代の育成に力を入れています。でも、本当は次世代とかキッズに限る必要ってなくて、これからのブレイキンを盛り上げるのは大人でもいいんですよ。新しく触れる人、これまでやってきた人が一緒になって、これからの時代を作っていくのが大事だと思っています。

ーーそんなこれからの時代を作っていくプレイヤーたちにどんなことを期待しますか?
Shigekix:自分らしさを大事にして欲しいですね。ブレイキンっていうのは正解がないからこそ、誰かになろうとするんじゃなくて、自分自身の描く理想を追い求めるべきだと思っています。
ーー個性が求められるということですね。
Shigekix:もちろん僕にも小さい時から憧れて見ていたダンサーはたくさん居ました。でも、僕がいつも頭の中で思い描いている理想は、まだこの世に実在しない将来の自分です。理想の自分をイメージして過ごすと行動が変わりますし、それが一日一日(積み重なって)大きな差になってくるので。
ーーそれでは最後に、今後の展望を教えてください。
Shigekix:ダンサーとしてのレベルアップっていうのは当たり前で、これからも追求していきます。それと同じぐらいブレイキンというカルチャーを発展させることに力を入れていきたいです。それがシーンの為でもあり、自分自身の夢でもあります。ステージというのは、裏方がいて、お客さんがいて、やっとプレイヤーがそこに立てる。この三角形を大きくしていくのが自分の役割だと思っています。
