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The Pillars of Protection

Pillars of Protection

MR-Gのベゼルに使用される「夢の金属」

COBARION®

タフネスと美しさを両立する高硬度合金「コバリオン」はなぜMR-Gに採用されたのか

COBARION®(コバリオン)は、一般的な高級時計に使われているステンレス素材を上回る硬度とプラチナに比肩する白く美しい輝きをあわせ持つ、日本で生まれた高硬度合金です。東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授が開発したこの金属は、優れた強度、耐摩耗性、耐食性を実現した「夢の金属」と呼ばれています。MR-Gは究極のタフネスと美しさを両立させるべく、コバリオンの製造工程を見直すことで腕時計への実用化に成功しました。開発した東北大学教授・千葉晶彦氏と、製造を担う佐々木雄大氏にコバリオンの素材としての魅力や、その自由な発想と取り組みについてお聞きしました。MR-Gがコバリオンを採用した理由を紐解いていきます。

株式会社エイワ 取締役専務
佐々木雄大 氏

関東にて大学卒業後、建設会社に入社。その後、2010年、株式会社エイワに入社し現職に至る。

東北大学金属材料研究所 名誉教授 
千葉晶彦 氏

1982年、東北大学工学部金属材料工学科卒業。1985年、日立製作所日立研究所に勤務。 1992年、岩手大学工学部助教授、2002年岩手大学教授を経て、2006年より現職。

堅牢性と美しさを両立。
MR-Gが採用したCOBARION。

2001年、鉄の町と呼ばれる岩手県釜石市において、コバリオンの開発が始まりました。当時、岩手大学の教授であった千葉晶彦教授は、コバルト合金の産業化について可能性を見出し、医療用の素材として研究をスタート。2012年に人工関節用の試作品が完成します。このコバリオンは、金属アレルギーを起こしにくく人体に優しいという特徴を持ち、優れた強度、耐摩耗性、耐腐食性を備えた画期的な最先端の医療素材でした。

そして2017年、G-SHOCKの最上位ブランドMR-Gへ採用されることになります。
「それまでは人工関節のような大きなものをつくるためにコバリオンを製造していましたが、MR-Gのために加工しやすい薄い形状とサイズにして納品する必要がありました。硬度を保ちつつ、薄くするため試行錯誤を何度も繰り返しましたね」(佐々木氏)

コバリオンの製造工程は一般的な金属と同じで、素材を溶かし融合させる「溶解」、その素材をプレスし硬度を上げる「鍛造」、薄く引き伸ばし加工しやすくする「圧延」に分けられます。溶解の回数と温度調整を何度も試み、現在の工程に至りますが、最終工程の「圧延」でさらに硬度を増すことができます。しかし、薄く伸ばすときに表面が割れたり、ひびが入ってしまったりなど苦戦したと佐々木氏は言います。さらに、コバリオンの硬度が高すぎて圧延機自体が壊れることもあるほど加工が難しい素材でした。しかし、佐々木氏の試行錯誤の末、圧延率の違いによって硬度が異なることを発見します。

また一方で、コバルト合金には、溶解時に本来不純物である「窒素」を注入させることで硬度が増すという特性も持っています。これはMR-Gの純チタンにも採用されている深層硬化処理と似た要素です。

「コバルト合金を研究していたとき、窒素を入れると劇的に硬度が上がることがわかりました。高温でプレスすると硬度が上がる剛性と、非磁性を持ち、さらに熱を加えたときの伸び率も高い。このような特性を兼ね備えた金属は非常に珍しい、というより『全く新しい合金』なのです」(千葉教授)

さらにコバリオンの持つ耐腐食性は思わぬ副産物をもたらします。それがプラチナにも匹敵する「輝き」です。「表面に緻密で堅牢な極薄の不動態酸化被膜が形成されるため、乱反射せずきれいに光るのです」と千葉教授が言うように、白く柔らかい重厚な輝きをもたらします。また高い耐傷性のおかげで、長い間この輝きを保っていられるのが、時計のベゼルや宝飾品などにも採用されている理由でもあります。ステンレススチールやチタンを上回る硬度と、プラチナにも及ぶ美しさを秘めた「コバリオン」。衝撃から腕時計を守る堅牢さと、見る者を魅了する美しさを必要とするMR-Gにふさわしい素材として、腕元で静かに光を携えます。

コバリオンの原料

コバルト、クロム、モリブデンからなるコバリオンは、高い強度と耐摩耗性を持ちながらも金属アレルギーを抑制する素材を開発するために生まれました。その結果、整形外科分野の人工関節や、歯科分野の歯科矯正ワイヤーや義歯床などの医療用だけでなく、ネックレス、指輪、ピアスなどの宝飾品にも幅広くさまざまなジャンルにおいて活用されています。

「溶解」を経てインゴットを製造

最初の工程である真空溶解炉に入れられた素材は、超高温により融解し混ざり合い、一定の冷却期間を経たあと「インゴット」と呼ばれる金属の塊を形成します。熟練の技術者による適切な温度管理、取り出しのタイミングなど、試行錯誤の末に現在の方法にたどり着きました。

1000℃を超える熱と「鍛造」

作られたインゴットは、再び1000℃を超える熱であたためられます。そして硬度を上げるため、600t油圧プレス機にかけることで縦と横から火花を散らしながら何度も叩かれ圧縮されていきます。これら「鍛造」工程は、インゴットを熱する温度や叩く回数など、ひび割れなどの原因にならないよう細心の注意を払って行われます。

薄く伸ばす「圧延」を行い完成するコバリオン

鍛造の後、「圧延」作業に入ります。熱間圧延装置に設置されると、少しずつ薄く伸ばされていきます。複数回行われる圧延作業では、最後の圧延で圧延率を変えることでさらに硬度が増します。こうした特殊金属であっても、素材の一貫生産ができる体制を整えていることがMR-Gにとって重要です。

純チタンの約4倍の硬度を持ち、プラチナ950のような輝きを放つ。

コバリオンの持つ魅力は、その堅牢性はもちろんプラチナに匹敵する柔らかく重厚な輝きです。さらに耐摩耗性が高く、耐食性にもすぐれるため、永く愛用することでも色が変化しにくく、いつまでも美しい輝きを楽しむことができます。純チタンの約4倍という硬度は、時計の中で傷つきやすいパーツの一つであるベゼルに採用することで末永く腕時計の美しさを守ります。

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